米不足 令和の米騒動!?

時事ネタ

最近、スーパーや米穀店で米が品薄になっています。前年に収穫された米が高温障害により品質が悪化し(これを防ぐ方法はあるのでしょうか?)、売り物にならない米が増えたため、例年より在庫が少なくなっています。さらに、インバウンド(訪日外国人客)の急増など、想定外の複数の要因が重なったことも影響しているようです。

この米不足はいったいいつ解消されるのでしょうか?あるいは、このまま米不足が続いてしまうのでしょうか。米は日本人にとって大切な食糧であり、古来より日本の発展の歴史に欠かせないものでした。その米すら手に入らない状態の日本が、一体どうなってしまうのか、不安が募る日々を過ごしています。

米不足の要因 ① 猛暑による品質低下!?

農林水産省が2023年12月に発表した同年産のコメ(水稲)の全国作況指数(平年が100)は、平年並みの101で、特段の米不足を感じさせません。

しかし、農水省によると、昨夏の猛暑による高温障害で品質が低下し、一等米の比率が減少したそうです。一等や二等といったコメの等級は、一定量のコメの中に粒の揃った整粒がどれくらい含まれているか、また白濁した粒など被害を受けた粒の比率によって決まります。

稲の穂が出た後に高温が続くと、コメの内部に亀裂が生じる「胴割れ粒」や、でんぷんの形成が悪く白く濁った「乳白粒」が生じます。胴割れ粒は精米の際に割れてしまうため、その割合が多いと精米歩留まりが低下し、商品としての評価が下がります。コメの流通業界によれば、「見た目が悪く割れたコメや被害を受けたコメは流通段階で取り除かれたため、消費者への供給量が少なくなった」とのことです。

米不足の原因 ② インバウンド増加と南海トラフ地震への警戒!? 

上記の猛暑による品質低下に伴う米不足の兆候は、今年の3月ごろから見られるようになりました。この時期から希望する量を仕入れることが難しくなり、その後も徐々に数量が減少していったようです。

在庫が前年を下回る中、春先からのインバウンド(訪日外国人客)の増加により、全国各地の飲食店での米消費量が想定を超えたことが原因と考える向きもあります。しかし、毎月300万人の旅行者が日本に7日滞在したとしても、日本人と同じ量の米を食べたとしても、その消費量は全体の0.5%に過ぎません。また、旅行客全員が米食をするわけではなく、パンや麺を食べる人も多いため、米食の傾向はそれほど強くないと考えられます。

さらに、8月8日に宮崎県沖・日向灘地震が発生し、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が出され、15日まで注意が呼びかけられたことを受け、家庭備蓄用の米の購入が急増した影響もあるようです。危機感を持つのは理解できますが、少々過剰な反応のように感じる部分もあります。

ただし、南海トラフ地震警戒の影響は、猛暑による品質低下やインバウンド増加の後に起こったものであり、もともと品薄になっていたところに追い打ちをかけた形ですので、根本的な要因ではないと思います。

本当の根本的な理由は「減反政策」にある

確かに上記の「猛暑による品質低下」「インバウンド増加」「南海トラフ地震警戒」といった要因も一因ではあると思いますが、根本的な理由とは思えません。

本当に根本的な理由として考えられるのは、もっと根本的な部分にあると思います。それは、減反による米の生産量減少です。農林水産省は高価格を維持するために米の供給量を減らし続けており、僅かな需要増でも不足する事態になっているのではないでしょうか。

前述の通り、2023年の米の作況指数は101でした。しかし、これは必ずしも米の生産量が前年より多かったことを意味しません。作況指数とは「一定の面積当たりの収量の良しあし」を示すものであり、米の作付面積が減少していれば、作況指数が100であっても、生産量は前年を下回るのです。

JA農協と農林水産省は、米の需要が毎年10万トンずつ減少するという前提で減反(生産調整)を進め、作付面積を減らしてきました。前年比10万トン減少という前提で作付面積を減らしていれば、作況指数が前年並みの100であっても、昨年9月から今年の8月までに供給される昨年産の米の量は前年産に比べて10万トン少なくなります。

実際に、作況指数101にもかかわらず、2023年産の米の生産量は前年の670万トンから9万トン減少しています。猛暑の影響やインバウンド増加、南海トラフ地震警戒などの要因以前に、2023年産の米の供給量は減反によって減少したものと言わざるを得ません。

減反政策の理由

では、なぜJA農協と農水省はここまで米の生産量が減るような政策を進めたのでしょうか。

日本では米は大量に作れる数少ない農作物の一つです。古来より「稲穂の国」と言われるように、米の生産が日本を支えてきました。大陸と海に隔てられ、災害も多いこの国で、1億人を超える人口を養い、経済発展を遂げたのも、米の存在があったからです。

しかし、日本では長年にわたり米が常に余る状態が続いています。多くの米があっても、消費量には限界があります。米の価格が半分になったとしても、消費量が倍になるわけではありません。つまり、米の価格が高くても低くても、消費量はほとんど変わらないのです。

消費量が安定しているため、生産量が増えると市場での供給過剰が生じ、価格が大幅に下がる「豊作貧乏」という現象が起こります。逆に、長雨などで不作になると、必要な量を確保するために価格が高騰します。つまり、不作になると売上が増加するのです。

JA農協と農水省はこの需給の特徴を利用しました。具体的には、米の供給を減らして米価を上げるために、減反政策を推進したのです。減反政策とは、農家に補助金を支給して米の作付面積を減らし、供給を制限することで米価を引き上げる政策です。わずかな供給の減少でも、米価や売上を大きく引き上げることができるのです。

負担が増す消費者

しかし、減反政策が原因で米不足が発生し、その一番の被害者は消費者です。何度も買い物に行っても米が見つからず、もしようやく見つけたとしても価格が上昇しており、購入に苦労しています。7月以降、需要が供給を上回ったことを背景に、仕入れ値が一気に約2割も高騰し、そのまま販売価格に転嫁されています。

「米が足りず、弁当が作れない」

「毎日1〜2食は麺類に変えている」

「今は確保するのが最優先で、物があれば高額でも買う」

世間の人たちの悲鳴が聞こえてきます。そしてこの高値では、変えたとしても節約せざるを得ません。

この品薄の状況を変える頼みの綱は新米です。8月中旬から高知や宮崎などの新米の入荷が始まり、今後は売り場に並ぶ数が少しずつ増えると言われています。米穀店などでは「在庫が厳しい状況は9月上旬までで、それ以降は緩やかに安定に向かう」と予測しています。しかし、高止まりした価格がどうなるかについては「見通しがつかない」とのことです。

減反政策を終わらせるしかない?

では、米不足を解消するにはどうすればよいのでしょうか。そのためには、「減反政策の廃止」が最も効果的だと思われます。減反政策を止めれば、この問題はほぼ解決できるでしょう。

例えば、1700万トン生産して1000万トンを輸出すれば、国内の需給が増減した場合でも輸出量を調整することで対応できます。こうすることで、国内での米不足は防げます。平成5年(1993年)の米騒動も、冷夏が原因と言われていますが、根本的な原因は減反政策にあったと考えられます。

しかし、「豊作貧乏」を招いてしまうと、米作農家が苦しい思いをすることになります。このため、新たな対策が必要ですが、簡単にはいかないでしょう。農家を支えるJA農協も痛手を受けることになり、農業従事者や関係者に「痛みを伴う改革」が必要になるため、抵抗が予想されます。

お米を作る農家の方も、お米を食べる消費者も、共に満足できる政策を政府、特に農林水産省が考えていただきたいものです。

※ 8月30日 17時30分の情報

農水省はいまだに備蓄米の放出に懸念を示しているそうです。

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